1990年、千葉市動物公園にやってきたオスのモンタとメスのモモコ。

2頭が成長すると、園では繁殖に向けた取り組みが進められていきました。しかし、繁殖の方法を変えながら、その可能性を探っても新しい命の誕生にはつながりませんでした。

そして1999年。

千葉市動物公園は、モモコを上野動物園へ送り出します。なぜ、モモコは長く過ごした千葉を離れ、上野へ向かうことになったのでしょうか。

そこには、ひとつの園だけではなく、園を越えてゴリラの命を次の世代へつなごうとする取り組みがありました。

今回はモモコが上野へ移動した経緯と、その後につながっていった新たな命をたどります。

繁殖に至らなかったモンタとモモコ

モモコ
千葉市動物公園で過ごすモモコ(写真提供:千葉市動物公園)

モンタとモモコは仲が良かったものの、2頭の間では繁殖に至りませんでした。

千葉市動物公園では、2頭を別々に過ごさせて柵越しに会わせたり、同じ展示場で過ごさせたりと、方法を変えながら繁殖の可能性を探ってきました。

しかし、さまざまな方法を試しても、新しい命の誕生にはつながりませんでした。

飼育員さん

幼い頃から一緒に育ってきたことが、繁殖につながらなかった背景のひとつではないかと考えています。

そこで、千葉市動物公園では、モモコと別のオス「ゴロ」との同居も試みました。しかし、ゴロとの間でも繁殖には至りませんでした。

モモコの繁殖の可能性を、どのように広げていくのか。
千葉市動物公園は、園の中だけではなく、園を越えて新たな可能性を探ることになります。

モモコを上野へ―園を越えた共同繁殖へ

モモコ
モモコ(写真提供:千葉市動物公園)

1988年、日本の動物園では、希少な動物の命を次の世代へつなぐために動物園同士が連携する取り組みが始まりました。

全国の動物園や水族館などで構成される「日本動物園水族館協会」では、その取り組みを計画的に進めるため「種保存会議」が設置されました。

ゴリラについては、上野動物園が中心となり、全国の動物園と協力しながら、繁殖に向けた取り組みが進められていきました。

そうしたなか、新たな繁殖の可能性が見いだされたモモコ。その相手となったのは、上野動物園で暮らしていたオスの「ビジュ」でした。

学びのポイント|種保存会議とは

種保存会議とは、日本動物園水族館協会に加盟する動物園や水族館が連携し、希少な動物の長期的な繁殖計画や、飼育下での個体群をどのように維持していくかを話し合う会議のことです。

1988年に第1回が開催され、ゴリラを含む33種が繁殖計画を優先して検討する種として選ばれました。

1999年7月27日。
モモコは、上野動物園との共同繁殖のため、長く暮らした千葉市動物公園を離れることになりました。

モンタ、そしてゴロとの取り組みを経て、次に向き合うのはビジュとの繁殖。
園の枠を越えた新たな挑戦の始まりです。

離れても続く、千葉市動物公園とのつながり

長く暮らした千葉市動物公園を離れ、上野動物園へ向かったモモコ。
しかし、上野へ移ったからといって、千葉市動物公園とのつながりがなくなったわけではありません。

モモコの移動は、繁殖を目的とした「ブリーディングローン」によるもの。
上野動物園へ移ったあとも、モモコの帰属は千葉市動物公園に残ります。

千葉から上野へ。
モモコの命を未来へつなごうとする取り組みは、園を越えて続いていきます。

学びのポイント|ブリーディングローンとは

ブリーディングローンとは、繁殖を目的として、動物園同士が協力し、動物を繁殖相手がいる別の園へ移動させる仕組みのことです。所有権は元の動物園に残したまま、新たなペアリングの可能性を探ることができます。

ニシゴリラのように限られた個体のなかで命を次の世代へつないでいくためにも、園の枠を越えた連携が大切です。

上野で誕生した、新たな命

モモコとモモタロウ
モモコとモモタロウ(写真提供:千葉市動物公園)

上野動物園へ移ったモモコは、ビジュとの繁殖に向けた新たな一歩を踏み出しました。
移動から約3か月後の1999年10月21日、モモコとビジュの交尾が確認されました。

そして、その翌年の2000年7月3日。

モモコはついに、第1子となるオスの「モモタロウ」を出産しました。
千葉で長く探り続けてきた、繁殖への道。

園を越えた取り組みは、モモタロウという新たな命へとつながりました。
そして2002年、物語の舞台は再び千葉へ。

2002年7月8日、モモコはモモタロウとともに、千葉市動物公園へ戻ることになります。
上野で生まれたモモタロウは、こうして母・モモコがかつて暮らした千葉へ。

ここから、幼いモモタロウと飼育担当者たちとの日々が始まります。

次回予告|やんちゃなモモタロウが見せてくれた、幼いゴリラの成長

2000年、上野動物園で誕生したモモタロウ。

2歳になったばかりの頃、母・モモコとともに千葉市動物公園へやってきました。

閉まりかける扉をギリギリのタイミングで通り抜けたり、高い木に登ったり。当時の飼育記録には、飼育担当者をハラハラさせるほど活発な、幼いモモタロウの姿が残されています。

千葉で過ごしたモモタロウは、どのような姿を見せ、どのように成長していったのでしょうか。次回は、千葉市動物公園で過ごしたモモタロウの成長を、当時の飼育記録と飼育担当者へのインタビューからたどります。